補聴器装用前に確認させていただくこと
私たち補聴器販売店では、補聴器の購入を考えてご来店いただいたお客様に確認させていただく事項がいくつかあります。確認させていただく事項に当てはまる方には、一度耳鼻咽頭科の医師にご相談することをお願いしています。
『禁忌八項目』と呼ばれる確認事項は、補聴器で快適な聞こえの生活を送れるか、どうかの大事な確認事項です。専門的な用語も多くある確認事項ですので、確認していきましょう。
①耳の手術などによる耳の変形や傷がないか
耳の中に傷があるまま補聴器を装用してしまった場合、傷の治癒が遅くなるだけではなく、より悪化してしまうことも考えられます。そのため、耳に傷がある場合は治療が最優先事項となってきます。
耳の変形ですが、耳の手術をした場合に耳の形状が変化する場合があります。オーダーメイドの耳穴型補聴器のように、耳の形状を調べて作製する補聴器では変形がある場合難しくなってしまいます。
以上のように、補聴器を装用することで耳の状態が悪化してしまうことを確認するためにも『耳の手術などによる耳の変形や傷がないか』確認させていただきます。
②中耳炎などで過去90日以内に生じた耳漏(じろう)がないか
耳漏(じろう)とは耳から液体が出ることで耳だれとも呼ばれます。耳漏がでる原因は
・中耳炎
・外傷
の二つに分類されますが、補聴器の装用は耳漏の状態を治してからになります。補聴器の装用により治りにくくなることや、耳漏が補聴器の破損につながることもあります。
③過去90日以内に生じた突発性または進行性の聴力低下がないか
急に聴力が低下する突発的な難聴は”突発性難聴”と言って早期治療が最重要になってきます。そのため、補聴器の装用ではなく耳鼻科での治療が最優先です。
※突発性難聴に関してはこちらの記事もご覧ください。
進行性の聴力低下に関しても、加齢などによる単純な聴力低下ではなく、治療によって改善する場合もあります。そのため補聴器装用前には、いつから聞こえにくくなったのか・急に聞こえなくなったのか確認させていただきます。
④過去90日以内に生じた片耳の聴力低下がないか
こちらは③と同じ理由になります。突発的に発生する”突発性難聴”は片耳に起こるケースが多いです。
⑤急性または慢性のめまいがないか
めまいと難聴は関係性があります。めまいと聴力低下がある場合、”メニエール病”を考えなければいけません。
メニエール病とは、内リンパと呼ばれる内耳(鼓膜よりも体の内側)に水がたまる”内リンパ水腫”により発生する病気です。補聴器を装用することにより、めまいが悪化することがありますので補聴器の装用はおすすめできません。
⑥外耳道に湿疹・痛みまたは不快感がないか
①や②と同様で、治療が優先される場合は耳鼻咽頭科の医師に相談していただくようになります。
⑦耳あかが多くないか
耳あかが詰まることによる難聴”耳垢栓塞”というものがあります。
※耳垢栓塞についてはこちらの記事もご覧ください。
耳あかが詰まるだけと思われるかもしれませんが、聴力の低下や耳鳴りなども引き起こします。耳垢水を使用し、耳あかを柔らかくして取り除きます。
⑧500、1k、2kHzの聴力に20dB以上の気骨導差がないか
専門的になりますが、音を感じる方法は空気の振動を耳で感じる方法と、骨を伝わり感じる方法と二つあります。
カラオケなどで自分の声が違うように聞こえるのは、耳で感じる音と骨を伝わり感じる音のバランスが変化するからです。
気骨導差とは上記のバランスで、差が大きい場合は治療により改善できる”伝音難聴”の可能性が出てきます。この場合も治療が優先される可能性があるため、耳鼻咽頭科への相談をおすすめします。
不安な場合は耳鼻咽頭科へ
①~⑧までの確認項目について解説しましたが、店頭で確認させていただく場合は世間話を含めながら少しづつ確認させていただいております。
大切なのは、治療によって改善される場合もあること・補聴器の装用が場合によっては逆効果になってしまうこともあることです。快適な補聴器生活をしていただくためにも、ご来店の際にはスタッフがよくおしゃべりするかと思いますが、お許しください。
メガネハットでは皆様のご来店心よりお待ちしています。