一本ダタラという妖怪が片眼・片足である悲しい理由
一本ダタラ(いっぽんだたら)という妖怪をご存知でしょうか?
和歌山県の熊野地方などで伝承されている妖怪ですが、全国各地でも同様の伝承があるのでご存知の方も多いと思います。
一本ダタラは一つの目・一本の足で描かれ、山中に住んでおり、地域によっては人を襲うとも言われています。一本ダタラに関しては諸説ありますが、今回はその一つをご紹介致します。
ダタラ=たたら製鉄?
ダタラという名称に関して、諸説ありますが有力なのが製鉄技法の一つである『たたら製鉄』です。
『たたら製鉄』は鉄が大陸から日本に伝ってきた時代からの製鉄方法で、砂鉄や鉄鉱石を原料に粘土製の炉で鉄を精製する方法です。
ちなみに、スタジオジブリの映画『もののけ姫』に登場する”エボシ”と呼ばれる女性が率いている集落がたたら製鉄を行っていました。
過酷なたたら製鉄
たたら製鉄の工程は昼夜を通して数日間行われます。1400℃以上の火力を維持するために大量の風を送り込むのですが、吹子(ふいご)という人工的に風を送り込む道具を使っていました。
足で吹子を踏むことによって大量の風を送り込むのですが、昼夜問わず数日感行われるため足を患う方も多かったようです。
また、火の様子も観察し続けなれけばいけないため、眼を患い失明する方も少なくはありませんでした。
一本ダタラが片眼・片足という理由は、たたら製鉄の過酷さを表しているのではないかと言われています。
たたら師たちの生活の場
たたら製鉄には大量の木炭と砂鉄、水が必要になるため、従事する人たちはそれらが豊富な場所に生活していました。その生活拠点を『山内(さんない)』と呼びます。
100人~200人ほどの小さな村のような独特な社会でしたが、近隣の農村とも交流があったようです。
ですが、独特な生活基盤を持つたたら従事者たちは、時として奇異な目で見られていたのかもしれません。一本ダタラの伝承は、こうした”たたら製鉄の独特さ”が生んだものかもしれません。
眼を火傷したら
火と向き合う仕事のため、眼を患うことの多かったたたら師たち。現代でも油を使った調理の際に眼を火傷するといった話が聞かれます。
もしも油の跳ねなどで眼を火傷してしまった場合は、眼を押したりこすったりせずに、すぐに眼科を受診しましょう。